コーチ・カウンセラーのためのFORTUNE式ブランディング術

成功法則はない

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「コーチング技術」にも
「自分ブランディング」にも
自信がないコーチを一流の
プロにする研究ばかりをしている
清水良胤(よしたね)です。

私はビジネス誌フォーチュン
に23年間勤務してきました。

フォーチュン誌は企業経営に
役立つ情報を伝えることを
目的にしております。

フォーチュンの記事には
二つのタイプがあります。

一つは企業経営の成功と
失敗のストーリー。

もう一つは成功した企業と
さほどでない企業の比較分析。

1990年代半ばにフォーチュン
ではジム・コリンズの執筆した
『ビジョナリーカンパニー』を
誌面で紹介しました。

当時100万人以上のアメリカ人
が読んで5年連続ベストセラー
になった経営に関する本です。

日本でも大変なベストセラー
になったので読者の皆さんも
ご存知かと思います。

この本はライバル企業を二社
一組で取り上げて分析しており
必ず一方がめざましい成功を
収めています。

GE、ウォルトディズニー、
3M、アメリカンエキスプレス
など超優良企業を取り上げて
います。

彼らがなぜ時代の変遷を
乗り越えてライバル企業より
も優れた業績を上げてきたかを
分析しています。

分析は企業文化、戦略、経営
手法などさまざまな角度から
行われています。

フォーチュンの記事もそうなの
ですが、良い経営手法を分析
して、それを読者に伝えること
を大切にしていました。

その考えの裏にあるのは
「その良いやり方を学んで実践
すればよい成果がついてくる」
という考え方です。

当時の私は成功している企業
のやり方を学べば成功できる
と信じておりました。

原因と結果には必ず法則が
あると思っていました。

そして

成功した企業には成功
する原因があるので
その成功法則を知れば
自分も成功できると
思っていたのです。

ところが

『ビジョナリーカンパニー』
で対象となった卓越した企業と
そうでない企業の収益性と株式
リターンの格差は調査終了後には
縮小し、ほとんどゼロに近づいて
いったのです。

フォーチュン誌が発表する
「最も賞賛される企業」に
ランクされた企業を25年に
渡った調査がありました。

そうしたら最下位にランク
された企業の株式リターン
が、最も賞賛された企業を
上回っていたという報告も
出てきたのです。

こういう話を聞くとわれわれは
すぐに成功した企業は自信過剰
になったから失敗し、失敗した
と言われた企業は必死に挽回
したというように原因を探そう
とします。

長い目で見ると成功も失敗も
平均値に回帰してくるのです。

原因→結果という方程式が
なりたつケースとそうでない
ケースを知ることが大切です。

世の中の問題には原因が
分かりやすいのと分かり
にくいのがあるのです。

蛍光灯が切れたというので
あれば、球が切れたか、
ブレーカーが落ちたか、
停電になったことが原因と
考えて良いでしょう。

ビジネスは複雑系なので
原因を特定するのは非常に
難しいのです。

ですので、
私はビジネスには成功法則
はないと考えています。

そう考えるに至った背景には
こういったビジネス上
の経験もあるのです。

一方、
最近のネット業界を見てみると、
成功法則を売りにしている
ところが多く目につきます。

ことに、起業や集客をメインに
しているところは「こうすれば
成功する」という話の
オンパレードです。

こうした考え方の裏には
成功法則が存在する
という信念があると
思います。

みなさんのなかにも
今までやってきた
ビジネスで成功したこと、
失敗したことなど、
いろいろおありのことと
思います。

また、コーチングや
カウンセリングでは
上手くいくときもあれば
そうでないときもあった
ことと思います。

ビジネスとして
あるいはセッションとして
成功した、うまくいった
ことの原因を見つけること
はできますか。

うまくいった原因を見つけた
と思っても他で役立たなかった
経験はありませんか。

自分で見つけた原因でも
上手く行かなかったら
他人が成功したという
方法で自分でも成功できる
かどうか分からないのです。

世界中のトップレベルの
経営者やコンサルタント
から絶賛を受けた本の
成功法則が、結局成り
立たなかったのです。

成功法則が私たちの
心を捉えて離さないのは
じつは脳が欲しているものを
与えてくれるからです。

それは「成功や失敗には
あきらかな原因があり
ますよ」「運なんていうのは
無視しても構いませんよ」
という脳のメッセージなのです。

私たちの脳は原因を探す
ことが本当に好きなのです。

今世界はVUCAの時代に
入ったと言われています。

VUCA(ブーカ)とは
Volatility (変動)
Uncertainty (不確実)
Complexity (複雑)
Ambiguity (曖昧)
の頭文字をとったものです。

今の時代は変動が大きく、
不確実で複雑で曖昧なので
解析不能な経営環境を示す
言葉として頻繁に使用される
ようになった言葉です。

こういう時代なので
現代のビジネスでは
「成功の法則」という
ものはありえないのです。

(了)